沿岸環境関連学会連絡協議会・日本財団 合同シンポジウム「地球温暖化に伴う我が国沿岸域の異変~忍び寄る海洋酸性化の現状~」(2022年3月17日開催)

主催 沿岸環境関連学会連絡協議会・日本財団
コンビーナー 田中丈裕(NPO里海研)・藤井賢彦(北大院地球環境)・小埜恒夫(水産機構水資研)・古川恵太(NPO海辺研)
日時 2022年3月17日(木)13:00~17:00
場所 日本財団ビル1階・バウルーム
※同時通訳付,対面・オンラインハイブリッド形式で実施(今後の新型コロナウィルス感染状況次第ではオンライン開催のみになる可能性があります)
参加方法 参加費:無料(学会会員以外の方も参加無料です)
参加方法:参加をご希望の方は、以下のシンポジウム参加申し込みフォームから送信をお願いいたします(学会会員以外の方も参加可能です)。
参加申し込みフォーム

詳細 〈 開催趣旨 〉
我が国沿岸、津々浦々の浜で、様々な異変が相次いでいる。思い起こせば、スルメイカ漁の漁火が日本海南部の沿岸域から消えたのが海の異変の始まりであったろうか。そして、瀬戸内海系群をはるかに凌駕する東シナ海系群のサワラ越冬群の北上により、北陸や東北でサワラが大量に漁獲され始めた。近年になって、北海道や東北では漁場が沖合に移動してサンマが獲れなくなった。サケが北の海で迷走して母川に帰ってこなくなり、サケ定置網にサケが獲れずにブリが大量に入網した。東北の太平洋岸では、2019年からシロザケの壊滅的な不漁が続き、一方で、タチウオが釣れ始め、漁獲サイズのイセエビが出現、キュウセンなどのベラ類が越冬するようになり、アイゴ成魚が現れて岩礁性藻場やワカメ養殖場を急襲している。
瀬戸内海では、北方系のカレイ類やアイナメ等が激減し、南方系のキジハタ等が増加した。水温低下に伴い深みに移動していたマダイが浅瀬で越冬するようになり、春から秋に大量に漁獲されるため市場単価が急落している。タイワンガザミが漁獲ベースで年々増加し、春から夏にはハマチ、11月以降の冬場には10kgを超えるブリが漁獲されるようになった。2021年に入ってトゲシャコ、ヨコスジフエダイ、ホウボウなど南方系の魚介類がさらに増え続けている。瀬戸内海中部では、ウミホタルやハマトビムシが刺網にかかった魚を食べるようになり、売り物にならない魚が増えた。瀬戸内海では、貧栄養化等に喘ぐ中、漁場環境の激変がさらに加速化している。
これら異変の多くは、人為起源CO2の過剰排出が引き起こす地球温暖化に伴う海水温の上昇が原因と考えられているが、もうひとつのCO2問題“海洋酸性化”も大きな脅威である。海水温が下がる南極域や北極域で酸性化が進みやすい、河川水が流れ込み海水中の成分が希釈される沿岸海域で起きやすい、など酸性化が進む要因が指摘されている。アメリカ西海岸のピュージェット湾では、2005~2009年に、プランクトン等の死骸が分解される際に発生するCO2が海底から湧昇して表層近くが酸性化し、ワシントン州とオレゴン州の養殖施設でカキ幼生が大量死する事態も起きている。これまで日本を含む世界各国の研究機関によって北極海や北西太平洋(東経137度線)などで継続的な観測が実施され、海洋酸性化の進行が確認されている。また、飼育実験等により海洋酸性化が海生生物に影響を及ぼすことも明らかにされてきた。しかしながら、我が国沿岸における海洋酸性化の現状についての研究は緒についたばかりである。2020年度から「日本財団 海洋酸性化適応プロジェクト」がスタートした。ワシントン大学の協力を得ながら、カキ養殖に焦点を当て、最もリスクを負う漁業現場のアクションに繋げるためのリサーチである。本シンポジウムでは、これら研究プロジェクトで得られた成果を基に、深刻な影響が目前に迫りつつある海洋酸性化について、得られた知見を集約して情報を共有し、今後の対策に向けての検討に備えることを目的としている。


〈 プログラム 〉

13:00~13:10
1.開会挨拶   沿岸環境関連学会連絡協議会 会長 今井一郎(北大水)

13:10~13:40
2.趣旨説明  田中丈裕(NPO里海研)

13:40~15:40
3.地球温暖化・海洋酸性化に関するこれまでの研究成果  〈座長〉古川恵太(NPO海辺研)

13:40~14:10
(1) 世界における地球温暖化・海洋酸性化研究の現状   
藤井賢彦(北大院地球環境)

14:10~15:10
(2) ワシントン州および米国西海岸における海洋酸性化の科学と政策における最近の進展
テリー・クリンガー/ライアン・ケリー(ワシントン大学)

15:10~15:40
(3)我が国沿岸域における海洋酸性化・貧酸素化の現状評価と対策の考え方
小埜恒夫(水産機構水資研)

〈休 憩〉

15:50~16:50
4.パネルディスカッション および 総合討論
「海の異変にどう立ち向かうか?」-地球温暖化、貧酸素化、そして海洋酸性化-

コーディネーター 太田義孝(ワシントン大学)
パネリスト    藤井賢彦(前出)
         小埜恒夫(前出)
         テリー・クリンガー(前出)
ライアン・ケリー(前出)
柳 哲雄(九大工:NPO里海研副理事長)
鷲尾圭司(元水大・林崎漁協)

16:50~17:00 
5.閉会挨拶    松田 治(広大水・NPO里海研理事長)

問い合わせ先 沿岸環境関連学会連絡協議会
沿岸環境関連学会連絡協議会ホームページ